最古 (?) のパチンコ攻略書を手に入れた

最古 (?) のパチンコ攻略書を手に入れた

 こんにちは。偏愛パチンコライターの栄華です。

このサイトは、栃木県と東京都でパチンコホール「BBステーション」を経営する株式会社大善の「採用サイト」でございます。

 

読者の皆様は、「古本」をお買い求めになることってありますか?

私は購入する本の半分以上が古本です。と言っても古本が取り立てて好きな訳ではなく、欲しい本が絶版になっているので否応なしに買うことになるのです。そして、そのほぼ100%がパチンコ関連です。

 

執筆の資料として活用しているのはもちろんですが、「パチンコと何らかの関係がある本を集めること」自体を趣味にしているので、レア本・珍本の類を常に物色しています。

 

そもそも集め始めたきっかけは、「パチ検」(パチンコ・パチスロに関する知識の検定試験。2007年に始まって数年続いたけどいつのまにか消えていた……)に挑戦するため、パチンコの歴史の本を買って勉強し始めたことでした。

 

2010年から集め始めて今年10周年。蔵書はやっと350冊を超えました。集めても集めても欲しい本は尽きず、むしろ入手困難な本の情報ばかり増えていきます。「縁があるならきっと会えるよね……」そう信じて蒐集に励んだ10周年イヤーも終盤に迫った11月下旬、

 

「つ……ついに手に入れたぞ!」

 

という声が思わず漏れるほどの本を購入できたのです。

今回はそちらをご紹介しようと思います。

 

 

これがその本です

 

石黒敬七 矢野目源一 共著『パチンコ必勝讀本』(東京文庫・1952年)

 

1952(昭和27)年出版。

パチンコ史に詳しい方ならピンと来るでしょうが、昭和27年はパチンコの歴史にとってたいへん重要な年です。どのように重要かについては後に述べるとして、まずはこの本そのものについて解説いたしましょう。

 

パチンコに関する本の王道といえば「パチンコの勝ち方」を著したものです。「攻略書籍」と名付けて分類していますが、攻略書籍は「正攻法系」「オカルト系」に分けられます。

 

正攻法系…釘読みや確率論、技術介入など、科学的根拠に基づいて攻略法を解説した本。

◆オカルト系…科学的根拠のない(または薄い)攻略法を解説した本。ジンクス、波理論、カニ歩き打法、電圧効果打法、グループ判定打法、ダウジング、超能力などなど。

『パチンコ必勝讀本』は前者です。ようやくそう断言できるようになりました。というのも、手にするまで内容がほとんど分からなかったからです。本の存在そのものは、他のパチンコ書籍の中で参照されているのを見て認識していましたが、どの程度、どのように勝ち方について語られているかは不明でした。「こういう書名のエッセイ集」である可能性もあると思っていました。

 

そう思った理由は、石黒敬七、矢野目源一という二人の著者にあります。お二人ともWikipediaに単独ページがある著名な方ですが、パチンコの専門家というより文化人的なイメージが強いのです。

 

1995年に発行された『パチンコ美術論 キッチュからイコノロジーへ』(渡邊靖之著 鳥影社)という本の中に、この二人のプロフィールが記載されていたので引用します。

 

★石黒敬七(明治30年~昭和49年)

新潟生まれ。柔道家・随筆家。早稲田大学卒。大正13年渡欧し、柔道を普及。昭和8年帰国。昭和24年よりNHK「とんち教室」レギュラー。珍品コレクターでも有名。遺品は「とんちン館」に展示。著書『蚤の市』『巴里雀』『旦那の遠眼鏡』『柔道千畳敷』『写真の父ダゲール』『がらくた美術』他。

 

★矢野目源一(明治29年~昭和45年)

東京生まれ。慶応仏文科卒。詩人・翻訳家。著書『風流色眼鏡』『娯楽大鑑』『官房秘薬90法の研究』他翻訳多数。

(※栄華注:『風流色眼鏡』は『風流色めがね』、「官房」は「閨房」が正確な書名のようです)

お二人ともパチンコがお好きだったようですが、このプロフィールからは勝ち方指南をして頂けそうな印象は受けませんね。

 

柔道家の石黒氏はNHKの人気ラジオ番組のレギュラーをつとめるなどタレント活動をされており、1952年公開の映画「大当りパチンコ娘」にも出演しています。パチンコメーカーの創業者と交友があった事情通で、本書ではパチンコの定義や歴史、パチンコ店やメーカーの数・社会の反応といった現況の解説、戦後のめざましい隆盛を哲学の視点で読み解くなど、パチンコ概論、文化論のような内容を担当しています。

 

一方、本格的に攻略法を説いたのが後半担当の矢野目氏。フランス語翻訳家として活躍するほか、大衆娯楽誌にもひっぱりだこの執筆者でした。本書では、釘とパチンコ玉の関係を力学の数式を使って証明したり(←すごく難しい)、機種解説や台選びのコツなどを解説しています。

 

資料)石黒敬七、矢野目源一著 『パチンコ必勝讀本』106頁より

 

 

最古のパチンコ攻略書籍なのか?

「パチンコ攻略書籍」とは、一冊ぜんぶパチンコの勝ち方とその関連知識で構成された本 と定義づけています。

 

私はパチンコ本コレクターとして、「最古のパチンコ攻略書籍」を特定したいと思い続けておりました。『パチンコ必勝読本』が手に入った今、最古は本書である可能性が高くなりましたが、以前はこの本を有力候補だと思っていました。

 

藤井一男著『パチンコ必勝法』(虹有社・1965年)

 

著者の藤井一男氏は十年あまり釘師として活躍した方で、本書以外の著作は発見できていません。初版は1965年発行ですが、私が所有しているのは1966年版です。重版がかかっているのでそれなりに売れたのでしょうね。

 

この本を最古候補にしたのは、国立国会図書館のデータベースにこれより古い攻略書籍らしきものがなかったことが理由のひとつなのですが、今回パチンコ必勝讀本を手にしたことで、

「もっと古い本」

「『パチンコ必勝讀本』以降『パチンコ必勝法』以前に発行された本」

がまだまだあるに違いないと考えるようになりました。

 

もし読者の皆様の中に「亡くなったおじいちゃんがパチンコ大好きだったな……」的な思い出をお持ちの方がおられましたら、遺品の中にパチンコ攻略書籍が残っていないか確認していただけないでしょうか(ご長寿様ご本人からの連絡も熱烈歓迎!)。世紀の大発見となるかもしれません。

 

 

『パチンコ必勝讀本』から読み取れる「時代」

『パチンコ必勝讀本』は1952(昭和27)年の発行。奥付を正確に書き写すと「昭和27年1月1日印刷 1日10日発行」です。

 

つまり、執筆されたのは1951(昭和26)年ということになります。

 

冒頭で1952年をパチンコにとって重要な年、と述べた理由ですが、「連発式」と呼ばれるパチンコ台が開発されたためです。それまでのパチンコは、左手に持った玉を「玉入口」に一個ずつ入れて打ち出さなければならなかったのですが、玉皿にパチンコ玉を入れておくと自動で発射位置にセットされる機構が発明されたのです。

 

(左)玉込めを1個ずつ行うタイプのパチンコ台(昭和20年代製) /(右)手で玉を込めて遊技する様子(パチンコ台は1965年製のもの)

 

連発式マシンの登場によって、パチンコの射幸性は一気に高まりました。時間あたりの発射数が飛躍的に増えたからです。

 

現在、パチンコの発射装置が1分間に打ち出せる玉の上限は100個ですが、連発式の中でも最も多いものは160~180個(資料によっては200個とも)の発射が可能だったそうです。連発式の遊技機は、パチンコ店をのんびりした庶民の娯楽場から鉄火場へと変貌させました。一気に社会的な批判が高まり、1954年には東京都公安委員会で「連発式禁止」が決定され、1955年にはこの流れが全国に波及しました。

 

……というのはパチンコ史にちょっと詳しい人なら誰でも知っている事実です。「パチンコの歴史の本」であればたいていどれにでも書いてあるので、私も最初は教科書的な知識として知っているに過ぎませんでした。

 

その知識を、当時の世情やエピソードを追体験しながら再認識できるのが書物です。古い時代ほど情報を得るのが難しくなるため、その意味でも『パチンコ必勝讀本』は貴重な資料と言えます。まさか「連発式以前」に、まるごと一冊パチンコについて書かれた一般書籍が存在したなんて!

 

前半の石黒敬七氏パートに、当時のパチンコが社会的にどのように捉えられていたかよく分かる一節がありました。「パチンコ是非論」という章から引用します。

 

パチンコ、パチンコ、ああパチンコ……。パチンコ是か非か。真正面切ってきかれれば、いわゆる「識者」は『あんな不健全な博打遊戯はいけない』と言うに決まつている。もう少し親切な「識者」は『音楽を楽しむとかスクェア・ダンスをやるとかの健全娯楽の設備を強化して、この浅ましい敗戦遊戯を止めさせよ』と主張する。戦後の仇花だ、今に飽きたら、同業者乱立でなくなるだろう、と思ってみたがなかなかどうして、いたるところにパチンコの音はいまもつて盛んである。(中略)パチンコはなぜ滅びないか? トバク性だのなんだのといつても、要するに安価に遊べて、やつている最中は忘我の三昧境に侵り得て、競輪のような実害が今のところはない、という点にあるだろう。いま流行の人生案内の相談を見ても『夫がパチンコに夢中になって困ります』というのは見当らない。いな、むしろ、自宅の近所のパチンコ屋に日曜のひとときをパチンコパチンコとピースの二つも取つて得々とするような亭主は、昨今まれに見る善良なる亭主と言うべきであつて、奥様方はいつそ張り合いがないぐらいに安心されているせいもあるのでないだろうか。(原文ママ)

 

インテリ層からは下品な遊びと見なされ、賭博性を指摘する人はいたものの社会問題になるほどではなく、競輪より射幸性が低いと思われていたんですね。

 

これに関連して、私の手元にはこんな資料があります。

 

3冊とも、すべてパチンコの記事が巻頭特集になっている『週刊朝日』です。

写真左から、1951年10月14日号、1952年2月17日号、1953年11月28日号。それぞれの内容を要約するとこんな感じです。

 

資料)朝日新聞社『週刊朝日』1951年10月14日号、5頁より。前出の写真と同じ図表が。

 

 

たった2年の間に、これほどまでに変わってしまったのか……と思わず溜息が出ます。

 

 

読み終えて

パチンコの今後・展望について議論される時、よく「パチンコ本来の面白さを取り戻す」といった表現が用いられます。玉の動きの面白さを「本来」と捉えてチューリップ台や羽根モノの再興を願う人もいれば、市場規模がピークを迎えた時代の台や遊技スタイルを見直そうという人もいる。私はというと、歴史を学べば学ぶほど、パチンコの「本来」とは何なのか分からなくなります。

 

ただ言えるのは、パチンコは戦後70年以上もの間、社会環境や法律・規則が大きく変化しても、時代に合わせて変化しながら成長し、存続してきたということです。

 

その変貌ぶりとしたたかさを思うとき、「もしパチンコから釘が無くなったら、それはパチンコと言えるのだろうか」とか「玉が封入され、触れることができなくなっても愛し続けられるだろうか」といった喫緊の懸念要素に気を揉むのが馬鹿らしくなるのです。「本来」などというものは幻想で、その時代に存在することを許されたものが「パチンコ」なのでしょう。

 

私はパチンコの変貌の歴史と、それに翻弄されながらパチンコと共に生きてきた人々の物語に惹かれます。心あたたまるものだけでなく、諍いや足の引っ張りあい、流言飛語といった混沌ですらもです。古今の書物からそういったエピソードを拾い上げ、歴史の表層をなぞっただけでは見えないパチンコの姿を知る。パチンコが成熟した文化となるためには、そうした過程が必要だと私は思います。黎明期を語ることのできる方々が鬼籍に入られる中、『パチンコ必勝讀本』は様々な示唆を次代に与えてくれるでしょう。

 

 

<おまけ>

矢野目源一氏の『娯楽大鑑』という本が気になって買っちゃいました。1949(昭和24)年発行。囲碁将棋、トランプ、手品、占い、民謡、手工芸他あらゆる娯楽が網羅され、撞球(ビリヤード)や麻雀の項目もあるのにパチンコには全く触れられていませんでした。

 

<参考文献>

石黒敬七 矢野目源一 『パチンコ必勝讀本』(東京文庫・1952年)

朝日新聞社 『週刊朝日』(1951年10月14日号、1952年2月17日号、1953年11月28日号)

藤井一男 『パチンコ必勝法』(虹有社・1965年)

百巣編集室編 『ザ・パチンコ パチンコ台図鑑』(リブロポート・1985年)

全遊協二十年史編集委員会 『全遊協二十年史』(全国遊技業組合連合会・1986年)

渡邊靖之 『パチンコ美術論 キッチュからイコノロジーへ』(鳥影社・1995年)

正村竹一資料室 『正村竹一ミュージアム 第2章 パチンコミュージアム』(1997年)

杉山一夫 『パチンコ誕生シネマの世紀の大衆娯楽』(創元社・2008年)

株式会社遊技通信社 『遊技通信で見るパチンコ業界の60年』(2011年)

パチンコ必勝ガイド編 『パチンコ歴史事典』(ガイドワークス・2017年)

韓載香 『パチンコ産業史 周縁経済から巨大市場へ』(名古屋大学出版会・2018年)

 

 

ライター紹介:栄華

パチンコライター。全国2500ヶ所以上のパチンコ店を探訪し写真撮影を行うほか、パチンコ書籍やパチンコ玩具等の蒐集など周辺文化の探究に軸足を置いた活動を行う。パチテレ!「パチってる場合ですよ!」「パチンコロックンロールDX」レギュラー。パチンコ必勝ガイドにて「栄華の旅がたり」連載中。著著「八画文化会館VOL.7 ~I ♡ PACHINKO HALL パチンコホールが大好き!!~」が好評発売中。 偏愛パチンコバンド「テンゴ」で作詞とボーカルを担当。