パチンコ屋さんの名前ランキング 1987~前篇~

パチンコ屋さんの名前ランキング 1987~前篇~

こんにちは。偏愛パチンコライターの栄華です。

こちらは栃木県と東京都でパチンコ店「BBステーション」を経営する株式会社大善の「採用サイト」です。「ホール企業で働きたい!」という方々に向けて、どこよりも偏った視点でパチンコホールの魅力を発信しております。

 

 

パチンコホールの「名前」から時代を読み取る

今回は、昨年お送りした好評企画「パチンコ屋さんの名前ランキング」の続編をお届けします。

 

▶どんな企画だっけ?

1968年から「娯楽産業協会」が発行しているパチンコホールの名簿「全国遊技場名鑑」を活用した歴史企画です。筆者が閲覧可能な中で最も古い1972年版に掲載された店舗情報を手入力で集計し、当時のパチンコ店の店名から読み取れる事象(ランキング・トリビアなど)をあれこれ語る!

 

<過去記事>

「単語ランキング編」

「店名ランキング編」

「トリビア編

 

今回は続編ということで、15年後の1987年のデータ(14018店舗分)を集計しました。さて、15年間でパチンコ店の名前はどのように変化したのでしょうか?

 

「全国遊技場名鑑」1988年版。前年の1987年のホールデータが掲載されています

 

 

1987年のパチンコ店名に多く使われている単語は?

まずは店名に多く使われていた「単語」の変化を見てみましょう。

 

▶ 集計ルール 

・店名を単語に分解して集計

 (例:BBステーション日暮里店→「B」「ステーション」「日暮里」「店」)

・地名は除外

・読みや意味が同じ語は合算(例:「セブン」「7」「SEVEN」)

 

※2020年分のみ

 ・「パチンコ(Pachinko)」「パチスロ、スロット(Slot)」「パーラー(Parlor)」「店」という単語は除外する

(※2020年分はYouTubeチャンネル「パチ屋の裏研修」がP-WORLD掲載のデータをもとに集計)

 

 

 

 

「会館」強し!?

私は「会館」が激減しているのではないかと予想していました。店名の横文字化が進み、会館というレトロ感漂うワードが好まれなくなると考えたのです。代わりに台頭してくるのは「ホール」ではないかと睨んでいました。

 

その予想は見事にハズれ、むしろ「ホール」はランクを下げています。上位に躍り出たのが「パチンコ(ぱちんこ)」。1972年に意外なほど少なかったので増えることは予測できましたが「会館」が首位を保っていたのには驚きました。

 

 

▲しかし、こうして全店舗数に占めるパーセンテージを見てみると「会館」の衰えがうかがえます。また「センター」も「ホール」と同様にランクを下げており、1972年に6位だった「遊技場」に至ってはランク外となってしまいました。

 

 

「○○会館」の看板には「KAIKAN」というローマ字表記がよく見られます。店名の横文字化に対応する方策だったのでしょうかね

 

 

 

「店」の急増から読み取れること

1987年のベスト10から、もうひとつ注目したいのは「店」という単語の使用数が激増したことです。1972年には約110件でしたが1987年にはなんと10倍以上の1200件超え。

 

これは、チェーン展開するホール企業が増えたからだと考えられます。「全国遊技場名鑑」は、掲載情報の中に「運営会社」の欄がないので「どんな企業が何店舗のホールを経営していたか」を読み取ることができません。しかし店名や代表者名から分かる範囲で言及すると、愛媛県の「コロンボ」というホールは店名に通し番号をつけており、1987年には「28号店」まであったことが読み取れました(南国産業株式会社という企業で、現在も7店舗のホールを営業されています)。また東京の「やすだ」というホールには「15号店」が存在していました(株式会社安田屋、現在は23店舗を経営)。

 

チェーン店が増えるほど、支店名をあらわす表記が増えるわけですから、個店経営がほぼ見られなくなった現在は「○○店」のオンパレードです。ちなみに2020年の単語ランキングを集計したYouTubeチャンネル「パチ屋の裏研修」さんは「店」という単語を除外したランキングを発表していますが、理由は「多いことが誰の目にも明らかなのでランキングに面白味がなくなるから」です。試しにカウントしてみると5200件以上ありました。

 

 

アレが増えた、1987年ですもの

ベスト10以下にも時代の流れは色濃く現れています。ランキング入りは逃したものの、1972年と比較して「急上昇したワード」を挙げてみましょう。

 

<ホールの「呼び方」に関係するワード>

▶パーラー

▶パチスロ・スロット(スロットル)

▶プラザ

 

▶パーラー

1972年には存在しなかった「パーラー」が登場。パチンコ店をパーラーと呼ぶようになったのは、業界誌「グリーンべると」(株式会社アド・サークル刊)が1986年から呼びかけた「パーラーコールキャンペーン」がきっかけと言われています。キャンペーンが始まってまだ間もないため45店舗のみでしたが、このあと訪れるパーラー隆盛時代の幕開けといったところでしょう。ちなみに2020年のP-WORLDで「パーラー(Parlor)」をカウントすると約500件ヒットしました。

 

“parlour”はイギリス英語、“parlor”はアメリカ英語の表記なのだそうです

 

 

▶スロット(スロットル)、パチスロ

これらも1972年には1件も見られなかったワードです。1985年にパチスロが「回胴式遊技機」として風適法に明記され、ホールには1号機が設置されていた時代です。店名に「スロット、スロットル」が含まれたものが32件、そして「パチスロ」は54件ありました。専門店も増加しましたが、当時のスロ専は設置台数50~100台ぐらいの小規模店が中心でした。

 

また、0号機時代の名残「アメリカンパチンコ〇〇」という店名のホールがまだ残っていたのが興味深かったです。登場年と消滅年も明らかにしたいですね(今後の課題)。

 

 

▶プラザ

単語ランキングで10位に食い込んだ「プラザ」。1972年には15件でしたが、1987年には300件以上へと増えたワードです。「プラザ」一語のみの店名は少なく、地名や屋号と複合させて「○○プラザ」「プラザ○○」といった形で用いられる例が多く見られました。

 

前述の「パーラー」もそうですが、店名に用いることで従来のパチンコ店のイメージを刷新できるようなワードが求められていたのでしょう。店名の前につけて店のコンセプトを示す「ショルダーネーム」の類も1987年には多様化しています。

 

1987年に見られたショルダーネームの例
「プレイランド」「プレイスポット」「プレイカントリー」「レジャータウン」「ファッションパチンコ」「ビッグジョイン」「ゲームパレス」「ボールセンター」etc…

1990~2000年代、ショルダーネームはさらにバリエーション豊かになってゆきます

 

 

<ホールの立地や規模に関係するワード>

▶郊外

▶ジャンボ

 

▶郊外

1972年:0件

1987年:12件

2020年:0件

▲という結果となった単語が「郊外」です。「郊外パチンコ〇〇」「〇〇センター郊外店」など、郊外にある支店を表すワードとして用いられていました。1972年にはまだホールの郊外化が本格的に始まっていなかったので、以降に現れた特徴的な単語のひとつと言えるでしょう。

 

1980年代の郊外型ホール(写真:娯楽産業協会)

 

 

▶ジャンボ

ホールの郊外化は「大型化」とも関連しています。平均設置台数が増加し、広々とした空間作りをアピールしたホールが増えていったこの時代「ビッグ」「グランド(=壮大な)」といった単語の使用件数が増加しているのも、大型化の流れを反映したものかもしれません。

 

「ジャンボという単語が店名に含まれているホールは本当に大きかったのか?」

 

という疑問がふと湧きました。そこで「全国遊技場名鑑」に記載されている「設置台数」を集計して全国平均と比較してみよう! と思い作業を進めてみたのですが……

 

  • 設置台数が記載されていない府県がある
  • 1店舗あたりの設置台数制限を設ける遊技業協同組合もあった
  • 店名に「ジャンボ」という語を含むホール(ちなみに293店)が、それぞれオープンした時代まで遡り「地域の中での規模感」を把握しないと正確な判断ができない

 

といった問題点にぶつかって今回はあきらめました。きわめてニッチかつ面倒な作業となりますが、細密に調べ上げればちょっとした論文になりそうなテーマですね(これも今後の課題)。

 

 

次回は「店名」ランキング

以上、時代の変化を色々と読み取れる集計結果となりました。1987年ごろに青春時代を謳歌された読者の皆さまは懐かしさも感じたのではないでしょうか。

 

次回は後編「店名ランキング」をお届けします。現在、店名ランキングを行うと「チェーン店舗数が多い法人」の屋号が上位に来るので簡単に予想できてしまいます。しかし1987年は、まだ大手企業に塗りつぶされ切っていないランキングを見ることができました。

 

上位を予想しながら掲載をお待ちいただけると嬉しいです。

 

 

<参考文献>

「全国遊技場名鑑 1988年版 東日本編・西日本編」娯楽産業協会 1988年

「『グリーンべると』と『王様手帖』が語りかけるパチンコ・パチスロ半世紀」株式会社アド・サークル 2014年

韓載香「パチンコ産業史 周縁経済から巨大市場へ」名古屋大学出版会 2018年

「日電協40年のあゆみ」日本電動式遊技機工業協同組合 2020年

「遊技業界データブック2021」一般社団法人日本遊技関連事業協会 2021年

 

 

ライター紹介:栄華

パチンコライター。全国2800ヶ所以上のパチンコ店を探訪し写真撮影を行うほか、パチンコ書籍やパチンコ玩具等の蒐集など周辺文化の探究に軸足を置いた活動を行う。パチンコ必勝ガイドにて「栄華の旅がたり」連載中。著著「八画文化会館VOL.7 ~I ♡ PACHINKO HALL パチンコホールが大好き!!~」 偏愛パチンコバンド「テンゴ」で作詞とボーカルを担当。