こんにちは。偏愛パチンコライターの栄華です。
こちらは栃木県と東京都でパチンコ店「BBステーション」を経営する株式会社大善の「採用サイト」です。「ホール企業で働きたい!」という方々に向けて、どこよりも偏った視点でパチンコホールの魅力を発信しております。
さあ今回もとびきりニッチなテーマに挑みますよ。
題して、パチンコ店の「ハンドドライヤー」の3年!
……わかってます。ハンドドライヤーに興味がない人が大半だってこと。でも伝えたいから、パチンコとハンドドライヤーへの愛をこめて丹念に書きました。このオタクめの叫びに耳を傾けてやってください。
パチンコライターがハンドドライヤーを追う理由
当コラムでは初めて打ち明けますが、私は「ハンドドライヤー」の愛好家です。全国津々浦々のパチンコホールを探訪する折には、トイレ内のハンドドライヤーの有無と機種・型番などをチェックします。
パチンコライターとしてハンドドライヤーを追いかける理由。それは国産ハンドドライヤーの代表機種のひとつ「ジェットタオル」が全国的に普及するキッカケとなったのがパチンコ店だったからです。
この話は三菱電機への問合せで事実確認済みでして、
- パチンコ店の特性上、使用時の運転音が気にならなかった
- 「トイレから早く戻りたい」というユーザーのニーズと「早く台に戻ってほしい」という店側のニーズに「ジェットタオル」の乾燥スピードの利便性が合致した
上記がパチンコ店に好まれた理由として挙げられています。
ジェットタオルのみならず、パチンコ店では様々なメーカー・時代のハンドドライヤーに出会うことができるため、私は個人的に「ハンドドライヤーはパチンコの周辺文化」と捉え、探究対象と見なしているわけです。
コロナ禍による受難
前述の通り、パチンコ店は昔からハンドドライヤーの騒音を気することなく設置できたので、古い型の機種が数多く残っています。歴史のあるパチンコホールを訪ねると「30年モノ」に出会うこともしばしば。たいへん見応えがあります。
最新の市場調査によると、ハンドドライヤーは全国の既存建物の19%、約285万ヶ所に設置されているそうです。その環境を一変させたのがコロナ禍です。2020年の春、全国のハンドドライヤーの大半が使用中止となりました。
「ハンドドライヤーで手指を乾燥する際に、温風やジェット風がウイルスを飛散させたり、ウイルスを含んだ水滴が飛び散る」といった内容の論文が国内外に存在していたのです(いずれも新型コロナウィルス蔓延前の論文で、中には実験手法に疑問の残るものも)。
2020年5月、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議は「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」の中に、
「ハンドドライヤーは止め、共通のタオルは禁止する」
という一文を掲載しました。
この提言をもとに様々な団体が、それぞれの実情を鑑みつつガイドラインを作成します。中でも店舗・商業施設に影響を与えたのが、日本経済団体連合会(経団連)による「新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン」で、2020年5月に発表されて以来、何度か改訂が加えられています。その中からハンドドライヤーに関する記述だけを書き出してみましょう。
経団連は、WHO(世界保健機関)やCDC(米疾病対策予防センター)がハンドドライヤーの使用を支持したことをふまえ、海外でのハンドドライヤー使用の実態を調査し、外部の研究機関に実験を依頼して「ハンドドライヤーの利用で発生する水滴、マイクロ飛沫による感染リスクが極めて小さいことが、複数の実験と数値流体シミュレーションを組合せて確認できた」とし、上記のようにガイドラインを改訂したのです。なお、内閣官房はこの見解を支持し、各都道府県や他の団体にもガイドラインの見直しを呼びかけています。
――ちょっと長くなりましたが、以上の流れを把握して頂いた上で、いよいよ本題です。
「パチンコ店の使用状況はどうなってんの?」
「他業種との違いは?」
といったことを私が足で稼いだデータを使って解説してみたいと思います。
162店舗のデータを見る
私は2020年3月~2023年1月の間に約600件のパチンコ関連物件(廃ホール、転用物件、ゲームセンター等を含む)を訪れています。このうち「現役のパチンコホールにハンドドライヤーが設置され、かつ稼動の有無を確認したもの」のみをカウントしたところ、次のような数となりました。
では、想像してみてください。
このあと「ハンドドライヤーが使用できたホール」が何店舗あったかを2020年〜2023年まで「年ごと」に発表します。それぞれの使用可能率はどのぐらいだったと思いますか? マイホや身近な公共トイレの状況を参考にしてイメージしてみてください。
では行きます。
2023年はまだそれほど現役店を取材しておらずデータが少ないですが、着実に使用可能なホールが増えているのがわかります。 さらに2022年のデータを前半と後半に分けて見てみると、
前半…15/39(約38.5%)
後半…16/28(約57.1%)
後半のほうが使用可能なホールに遭遇する頻度が上がっていました。ちなみにわれらがBBステーションは、佐野田沼インター店がペーパータオルで対応中。日暮里店は今年1月中旬に使用を再開したそうです。
さて、個別の事例に触れながら傾向を見てみましょう。まず使用可能なホールが増え始めた時期について。やはり2021年の春以降ですね。このような掲示物を見かけるようになりました。
私がホール探訪中に初めてこの表示を見たのは2021年のゴールデンウイークです。経団連が改訂版のガイドラインを発出したのが4月13日ですから、すぐに反応したことが分かります。
▲これは2022年に訪ねたホールですが、2021年の指針改定後すぐに掲示されたであろうことが文面から読み取れます。
ほかにも掲示物についてはこのような変わり種もありました。
▲ハンドドライヤーの上に掲示されていたものです。「ペーパータオルは節約して、できればハンドドライヤーも使ってね」との想いが感じられます。2021年春にはペーパータオルの価格が一斉に値上げされましたので、ホールとしては経費節減の意味合いでもこのような掲示をしていたのでしょう。
使用状況によりますが、ハンドドライヤーよりもペーパータオルのほうが高コストとなる例も少なくないそうです。さらには使用済みペーパーの処理やゴミ箱周辺の清掃・消毒、ペーパー交換といった労力もかかるため、トイレの清掃を内部のスタッフで賄っているホールにとっては負担増となります。
コロナ禍以降、ハンドドライヤーを撤去してしまったホールも散見され愛好家としては少なからずショックを受けていたのですが、上記のような事情も考えると、今後ハンドドライヤーの復権は充分にありうると感じています。
他業種との比較
他業種の使用状況はどうでしょうか。昨年までのデータは取っていないので、2023年に入ってからハンドドライヤーが設置されている店舗や施設を私の生活圏内(愛知県が中心)でランダムに53ヶ所訪ねて使用状況を確認しました。その結果、ハンドドライヤーを使うことができたのは53ヶ所中15ヶ所。約28.3%に過ぎませんでした。
【調査した店舗・施設】
JR駅構内(1/1)、ガソリンスタンド(1/2)、高速道路サービスエリア(1/1)、家電量販店(0/1)、コーヒーショップ(0/1)、コンビニエンスストア(0/5)、商業ビル(2/5)、書店(1/2)、ショールーム(1/1)、スーパーマーケット(0/3)、ディスカウントストア(1/1)、デパート(1/4)、ドラッグストア(1/4)、ネットカフェ(1/1)、複合ビル(2/13)ファストフード店(1/1)、ホームセンター(0/1)、ホテル(0/1)、ショッピングモール(0/2)、地下飲食店街(0/1)、ファミリーレストラン(1/2)
※( )内は、使用可能数/調査数
「複数の実験やシミュレーションによる検証」
「ハンドドライヤーが原因での感染事例が報告されていない事実」
「海外での使用の実態」
感染リスクが低いことを示す証拠がいくつあっても、世間のハンドドライヤーへの情報はアップデートされていないことが分かります。
三菱電機によると、ジェットタオルの販売数は「コロナ禍前(2019年度)を100とすると、2020年からの3年間は35~50と大幅ダウン」だそうです。
2020年春、パチンコは偏見による誹謗中傷や、クラスター発生の誤情報により風評被害を受けました。その様子を目の当たりにしたパチンコファンとして、私はハンドドライヤーの現状にシンパシーを感じています。そして、パチンコ店が他業種よりも積極的に使用を再開していることに勝手ながら誇らしさを覚えるのです。
近年は、手の乾燥と同時に空気を清浄する製品や、水を吹き飛ばすのではなく「吸引」するタイプのハンドドライヤーも開発されており、パチンコ店への導入例も見られます。古い型の製品が消えていくのは残念ですが、一方で新しいものが生まれ、発展していく様子を見るのは喜ばしいことだと捉えるべきでしょう。
最後に
パチンコとハンドドライヤー、いずれも深く愛好している私から、最後に伝えたいことがあります。
ハンドドライヤーは、正しく使いましょう。
ホールはメンテナンスをして清潔なハンドドライヤーを提供してくれるはずです。我々利用者ができることは、
①丁寧な手洗いでウイルスや雑菌を洗い流す
②水分が完全になくなるまでしっかりとハンドドライヤーで乾かす
この2点です。そのあとアルコール消毒をすれば、ペーパータオルより衛生的・効果的に手の清潔を保つことができますよ。
キレイな手でハンドルを握りたいですね。
~参考資料~
・一般社団法人日本経済団体連合会「新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン」(2020年5月、2021年4月、2022年6月)
・新型コロナウイルス感染症対策専門家会議「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(2020年5月)
・三菱電機株式会社「ハンドドライヤーの使用による飛沫飛散シミュレーションと感染リスク試算」(2021年3月)
・(公社)日本産業衛生学会、令和2年度厚生労働科学特別研究事業研究班「職場における新型コロナウイルス感染予防対策マニュアルシリーズ4 接客業における感染予防・対策マニュアル」(2021年4月)
・内閣官房新型コロナウイルス等感染症対策推進室「感染拡大防止と社会経済活動の両立に向けた業種別ガイドラインの見直しを踏まえた都道府県における対応ついて(依頼)」 (2022年10月)
・竹内史朗・古橋 拓也・打田昌樹「ハンドドライヤー使用時における水滴の挙動」空気調和・衛生工学大会学術講演論文集(2007年)
・木村 聡・相澤 寿子・増山 智子・仲間恵美子「病院における手指温風乾燥機とトイレ環境の細菌汚染調査」(2008年)
・ Kimmitt P, Redway K. “Evaluation of the potential for virus dispersal during hand drying: a comparison of three methods. Journal of applied microbiology” (2016年)
ライター紹介:栄華Twitterリンク変更用
パチンコライター。全国2800ヶ所以上のパチンコ店を探訪し写真撮影を行うほか、パチンコ書籍やパチンコ玩具等の蒐集など周辺文化の探究に軸足を置いた活動を行う。パチンコ必勝ガイドにて「栄華の旅がたり」「ゆるパチ偏愛道」連載中。著著「八画文化会館VOL.7 ~I ♡ PACHINKO HALL パチンコホールが大好き!!~」 偏愛パチンコバンド「テンゴ」で作詞とボーカルを担当。