こんにちは。偏愛パチンコライターの栄華です。
こちらは栃木県と東京都でパチンコ店「BBステーション」を経営する株式会社大善の「採用サイト」です。「ホール企業で働きたい!」という方々に向けて、どこよりも偏った視点でパチンコホールの魅力を発信しております。
早速、まずこの写真をご覧ください。
▲28年前(1995年)に伊豆半島で撮影。
パチンコ店ではなく普通の民家だったと思います。
「こんな表示物を出さねばならないほどブロック塀を何度も傷つけられたのだろうか」
「だとしたらそれはなぜか」
「『10万円以上の』ではなく『最低10万円の』と記したのはどんな理由か」
「筆跡から厳格さが感じられるが『弁償を取る』という表現にはなんか抜け目が感じられてかわいいな」
などなど、想像力を搔き立てられて思わずシャッターを切りました。
こういった「○○したら××円いただきます」系の表示物。今もまれに見かけますが、実は無効であることをご存知の方は多いと思います。例えばこの写真の場合、ブロック塀を不当に損傷されたのなら弁償してもらえる可能性は高いと思われますが、示談交渉や訴訟を経て損害賠償額が決まるので、この家の持ち主が10万円払えと命令することはできません。
これと似た表示物が身近なところにもあります。
▲「契約者以外の駐車は禁止です。許可なく駐車された場合罰金1万円を申し受けます」
パチンコホールの駐車場で撮影しました。「罰金」と書いてありますが、日本は法治国家なので私刑は禁止されており、この「罰金1万円」は無効です。
そろそろ本題に入りましょう。この記事で皆さんと共有したいのは、こうした表示の法的な是非についてではありません。だって、無効であることはおおかた知れ渡ってますよね。私は「どれだけ無断駐車をして欲しくないかを訴えるための表現手法のひとつ」だと捉えています。不心得者に「ここに無断駐車したら面倒なことになるな」と思わせることができればしめたもの、ぐらいの感覚なのでしょう。
取れないことがわかっている罰金。
取られないことがわかっている罰金。
なんと珍奇で滑稽な慣習でしょう。そう思うと、ふつふつ好奇心が湧き上がり、知りたい気持ちに抗えなくなりました。
以下について調べてみようと思います。
①無断駐車禁止表示の何割にこういったペナルティが記されてるか
②罰金の最高額、最低額はいくらか
③平均額はどのぐらいか
④罰金以外にもペナルティのバリエーションはあるか
【調査方法】
▶ 私がパチンコ店を訪ね歩いて撮影した写真の中から「無断駐車(駐輪)禁止」の表示物を抽出
▶ その中から「無断(駐輪)駐車へのペナルティ」が記載されているものを集計する
▶ 筆者が2009年12月~2023年7月に撮影した写真を調査対象とし、現役店・廃業店は区別しない
興味のある方はお付き合いをよろしくお願いします。
①何割にペナルティ表示があるか
私は訪れたすべてのホールで駐車場の写真を撮ってきたわけではありません。意図せず写り込んでいたものも含め、駐車内表示物の写真を洗い出したところ「無断駐車(駐輪)禁止」と明記されたものを151件抽出することができました。もちろんすべて異なるホールです。そのうち「無断駐車(駐輪)に対する何らかのペナルティ」が記載されていたのは97件。よって、結果はこのとおり。
約64.2%(栄華調べ)
②罰金の最高額、最低額はいくら?
3千円……1件
5千円……5件
8千円……1件
1万円……24件
2万円……4件
3万円……20件
5万円……13件
10万円……2件
金額は明記せず「罰金」の語のみ……8件
最高額……10万円
最低額……3千円(栄華調べ)
ただしこれには例外がありまして、中には「30分ごと」「1時間ごと」の罰金(駐車料金という名目)を設定しているお店が複数見られました。
その最高額はなんと「60分3万円、その後30分ごとに1万円」。5時間止めれば11万円となり、このホールが優勝です。駐輪場でしたが、悪質な無断駐輪によほど手を焼いておられるのでしょうね(ちなみに現役店でした)。
③平均額はどのぐらい?
②の金額別件数から平均額を算出したところ、きっちり割り切れました。
25,800円(しつこいようですが栄華調べ)
④罰金以外のペナルティは?
大きく分けて6種類ありました。
◆レッカー移動(13例)
最も多かったのがこれです。レッカー移動単独ではなく「罰金+レッカー移動」という例がほとんどでした。目を引いたバリエーションとしては、罰金の内訳を「レッカー移動代金とその手数料」であることを明記した例や、「レッカー移動もしくは罰金」いずれかの方法で対応する旨が示されたもの(写真)がありました。
◆撤去処分(4例)
駐輪場のペナルティ表示には「レッカー移動」という言葉がなく「撤去」という表現が使われてしました。内容としてはレッカーとほぼ同義ですね。
◆通報する(5例)
5例中3例が「警察に通報した上で罰金を申し受ける」という内容でした。さらに「違反の車両はすべてナンバーを控えております」と追い打ちをかける例も見られました。
◆車輪をロックする(3例)
ここからやや過激になります。▲この写真は2000年代半ばまで営業していたホールの駐車場で撮影したもの。設置台数約130台、温泉地に程近く長閑な雰囲気のお店でしたが、悪質な無断駐車には「1時間につき1万円の駐車料金」「クサリでタイヤをつなぎます」と力強い手書き文字で訴えていました。鬼気迫るものがありますね。
◆タイヤの空気を抜く(3例)
無断駐車への牽制として、パチンコ店に限らず駐車場表示で散見された文言ですね。ある程度の抑止効果はあるのかもしれませんが、本当に実行した場合、逆にホール側が器物損壊罪に問われる可能性があります。
◆強力なノリで注意書きを貼る(2例)
ホール探訪を始めるまで私は知らなかったんですが「強力なノリで貼り紙する」という嫌がらせ含みの警告は意外とポピュラーな手法なようですね。しかしこれもやはり、車を傷つけることになってしまうとホールのほうが罰せられる可能性があります。
▲(取れませんぞ)は個人的にツボ。高圧的になりすぎないようにという配慮でしょうかね。
番外:「駐車料金」なら請求できるのか
ほかにも印象に残った例をいくつかご紹介。
- 同じホールなのに、表示物によって罰金額が異なる店があった
- 同じホール企業でも、支店によって罰金額が異なる店があった
- 「罰金」ではなく「駐車料金」という表現を使う店があった
この中から「駐車料金」について言及します。
無断駐車をした人にホールが罰金を科すことはできませんが「駐車料金」なら請求できる可能性はあるようです。ただし、近隣の駐車場の相場に合わせた金額になるので、例えばこのような極端なものは無効となってしまうでしょう。
▲駐車代金3万円は無理?
ところで私はホール探訪中に、無断駐車への料金請求を行っているホールに遭遇したことがあります。▼これはその時の画像です。
このホールの駐車場には入庫ゲートやロック板の類がありませんでした。そのためホールのスタッフが、それは厳重に駐車場の見回りをしておられました。「30分500円」という価格は法外ではなさそうですし、貼り紙の固定に養生テープを使っておられて至極冷静です。訴訟等に持ち込むことなくお金を徴収するには、このあたりが落としどころなんでしょうね。
最後に
パチンコホールの駐車場に残るペナルティ表示物。集計結果に「栄華調べ」という断りを繰り返し入れたのには理由があります。私が訪ね歩くホールには「偏り」があるからです。歴史が感じられる店舗を好み、あまり改装が加えられていないホールや小規模店を優先的に訪ねてきました。64%という結果は、古い店を訪ねて写真を撮ってきた「栄華調べ」ならではの数字で、実際はもっと少ないと考えられます。ここ10年ほどの間に新しくできたホールの駐車場にペナルティつきの表示物を見つけるのは難しいでしょう。
今回集計した151件のうち、取材当時すでに閉店していたホールは24店舗。2023年8月10日現在はさらに50店舗以上が閉店しています。つまり、またいつものオチですが、このような表示物も時代の流れとともに消えつつあるのです。
ふとした好奇心で調べてみたことではありましたが、これからも私は罰金額の新記録更新を求めて駐車場を観察してしまうでしょうし、他業種との差異なども深掘りしてみたくなりそうです。変わり種を御存じでしたら、まだ残っているうちにぜひ情報をお寄せください。
ライター紹介:栄華Twitterリンク変更用
パチンコライター。全国3000ヶ所以上のパチンコ店を探訪し写真撮影を行うほか、パチンコ書籍やパチンコ玩具等の蒐集など周辺文化の探究に軸足を置いた活動を行う。パチンコ必勝ガイドにて「栄華の旅がたり」「ゆるパチ偏愛道」連載中。著著「八画文化会館VOL.7 ~I ♡ PACHINKO HALL パチンコホールが大好き!!~」 偏愛パチンコバンド「テンゴ」で作詞とボーカルを担当。